ちいさな「ゆうび」 ―こんな居場所があります―3 生きづらさを抱えた若者たち

柏マニアNo.
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杉山
スギヤマ
麻理江
マリエ
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ゆうびはフリースクールですが、年齢制限がありません。

「卒園」というものがないので、希望すればいつまでも学園生でいることができます。

何十年か前までは、『中学卒業と同時にゆうびも卒園』というのが慣わしでした。

しかし、卒園してもゆうびを居場所として求める声が多いこと、「卒園には人それぞれのタイミングがあり、年齢で区切れるものではない」という考えのもと、年齢制限は撤廃され今日に至ります。

                             

 

 

今では一番上の年齢の学園生は30代後半。学園全体の半数以上が二十歳以上です。

見学に来られる方には「よく誰が学園生で、誰がスタッフさんか見分けがつきませんね」と言われます。

音楽室の片隅にお酒の並んだ棚とバーカウンターがあることにも驚かれます。コロナ以前は、イベントでバーテンダーをやる子がおり、二十歳以上の若者たちがお酒を飲みながら語らい、子どもたちはノンアルコールカクテルで乾杯というような機会がよくありました。

 

幅広い年齢層のなかでは、人間関係もゆるやかです。

子どもたち、若者たちは互いに関わり合いながら、自己や他者への理解を深めています。

 

 

 

 

現在ゆうびに通っている若者たちは不登校経験者がほとんどです。

学生、正社員、アルバイトなど。特に何もしていないという人もいます。

就職したけれど、「ギスギスした人間関係に心が疲弊する」、「要求されるスピードで作業をこなすことができない」など、仕事を続けることが難しい人もいます。

彼らを見ていると多かれ少なかれ『不登校的気質』とも言えるような性格、特性を持っている子が多い気がします。

個人より集団を優先する社会の在り方に疑問を感じる、他者の痛みに敏感、効率的・合理的な仕事のやり方についていくことができない、一律に利益を求められるのがつらい・・・。やさしく繊細な感受性を持った子が多いです。

 

 

「不登校は一生直らないのか」、「大人になってもそれでいいのか」という声もあるでしょう。

 

しかし、年齢が二十歳になれば「大人」になるわけではありません。

人生は長い。

30歳くらいまではいろんなことに挑戦したり、自己をみつめたりしながら、ゆっくり自分の生き方や価値観を模索しても遅くはないのではないでしょうか。

 

今、時代は大きな転換期に入っています。

一部の階級の人が、弱者の痛みの上に、利益を搾取している社会は長続きしません。

持続可能な社会の実現のためには、『自己と他者の命と尊厳を、尊重する人間力』が不可欠です。そうした時代に、彼らの繊細さ、やさしさは決して弱みではなく、強みになっていくはずです。

焦らせることなく、その人なりの成長を、ゆうびは見守っています。

 

 

※画像はコロナ以前の活動の様子です

この記事を書いた人

杉山
スギヤマ
麻理江
マリエ
プロフィール

フリースクールゆうび小さな学園スタッフ。

北海道出身。大学卒業後、2005年JYVA(日本青年奉仕協会)ボランティア365事業をきっかけに『フリースクールゆうび小さな学園』に出会う。

さまざまな個性を持つ子ども・若者に囲まれて目からウロコの日々を過ごす。1年で地元北海道に戻るつもりが、ゆうびから離れられず、気付いたら15年以上。

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