ドイツ人留学生マルテの『つながるまち歩き』7:雨の日の珈琲

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English Version:Ame no hi no coffee

世界最高の珈琲

『雨の日の珈琲』に行き、コーヒーの世界への扉を開きました。『雨の日の珈琲』のオーナー、久保田プルートさんが暖かい松明(たいまつ)を持って、最初の暗い深淵のような世界を少しずつ明るくしてくれて、私が全然知らない世界の道をていねいに案内してくれます。私のようなコーヒーの素人でも、職人精神を持っている玄人の久保田さんと話すと、単なるコーヒー豆の話にとどまらず、その伝統、歴史、世界の人々の好みの違いについて話が広がり、時間の感覚がなくなっていきます。お店から溢れるコーヒーの香りが心の奥に触れ、きっとあなたも『雨の日の珈琲』からしばらく出られなくなるでしょう。

雨の日の珈琲

柏駅から徒歩5分ぐらい離れたところ、国道6号線の近く(柏市あけぼの)に向かうと、コーヒーのオアシス『雨の日の珈琲』のかっこいいロゴが目立ちます。お店に入ると、外とは別世界に移動します。コーヒー豆の独特な香りが満ち溢れ、足元にはコーヒー豆の大きな布の袋、そして焙煎機、窓際の席。限られた空間でも充実した、オリジナリティいっぱいの店内です。特に印象に残るのが、広々したカウンターと久保田さんの姿です。カウンタートップに並んでいるたくさんの高級なコーヒー豆、久保田さんの落ち着いた声とオーラがお客さんを落ち着かせます。話すときも常にコーヒーへの熱心な心が伝わってきます。『雨の日の珈琲』は2013年から始まったお店で、店内でもコーヒーを楽しめますが、自家焙煎のコーヒー豆の販売がメインです。久保田さんは19歳から自家焙煎の経験を積んでいて、焙煎の秘密を追いかける精神を持ち、お客さんに世界トップクラスのコーヒー豆を提供するこのお店を運営しています。コーヒー豆を自家焙煎し、コーヒーの味をコントロールするのも久保田さんです。とても珍しい日本製の焙煎機を使い、『雨の日の珈琲』の味はここでしか楽しめません。コーヒーの味には木の育ち方、種類、発酵の仕方などが強く影響していますが、最後に焙煎するときに職人の味が付きます。もちろん豆の育ちも『雨の日の珈琲』は世界のトップクラスを集めています。どれほどすごいコーヒー豆なのかは、次に紹介する「コーヒーピラミッド」を見てください。

コーヒーピラミッド

『雨の日の珈琲』で扱うコーヒー豆の品質を理解するために、「コーヒーピラミッド」を紹介します。下記の図はコーヒーの品質をピラミット型でわかりやく見せていると思います。下はクオリティが低く、上に行くほどクオリティが高くなります。豆の価格、サステナビリティ(持続可能性)、トレーサビリティ(流通の追跡)など様々な観点からコーヒー豆に点数が付き、評価されます。80点以上の豆は「スペシャリティコーヒー」とよばれ、88点以上が「トップ・オブ・トップ」(世界最高レベル)となります。

ちなみに、この日私が飲ませていただいたコーヒーはトップ・オブ・トップです。一杯目は「水洗式」(ウォッシュド)、2杯目は「非水洗式」(ナチュラル)というものでした。水洗式はすっきりした風味の、品質を一定に保たれているコーヒーで、非水洗式は豆本来の自然な味が特徴です。特に一杯目のトップ・オブ・トップはフルーティーなフレーバーが特徴として私の頭に残っています。コーヒー豆はコーヒーの果実の種なので、本来はフルーツだからフルーティーな味なのです。『雨の日の珈琲』のカウンタートップに並んでいるコーヒー豆はすべてスペシャリティコーヒー、80点以上のモノです。それはすべてのコーヒーの上位5%しかありません。トップ・オブ・トップはさらにその内の数%の上位のコーヒーですから、すべてのコーヒーの中では0.x%かの上位のモノで、育ちも工程技術も優れたコーヒー豆です。

日本人のこだわり

外国人の私が日本に来る前には、日本人はコーヒー好きというイメージがあまりなく、日本はお茶の国だと思っていました。実は日本では、コーヒーは緑茶の約3倍の量が飲まれているそうです。久保田さんは日本のコーヒーを誇りに思い、コーヒーの世界最高技術を使い、世界で一番美味しいコーヒーを作っている国は日本だと言います。一杯あたりの原価は日本が世界で一番高いそうです。

世界のコーヒー

私が特に興味深かった話は、世界のコーヒーの好みです。世界の国々の味の好みはコーヒーでわかるそうです。日本と現在のアメリカはわりと濃いコーヒーが人気で、ヨーロッパは南から北の方向に行くにつれてコーヒーの味の好みが変わります。南欧はコーヒーが濃くて苦味もあり、私の出身地ドイツに近づくとコーヒーが薄くなり、酸味が強くなります。北へ行くともっと酸味が強くなり、北欧の国、スウェーデン、フィンランドなどが一番コーヒーが酸っぱいそうです。久保田さんにもう一杯、ドイツ人が好むようなコーヒーを淹れていただきました。一瞬で酸っぱさが舌に広がります。確かに、10年ぐらい前にドイツで飲んだコーヒーと近いかもしれません。私はドイツ人ですが、個人的には強い酸味のコーヒーよりも苦味とコクのある風味のほうが好きですね。

職人精神の珈琲マスター

日本はさすが職人の国です。職人をいえば、剣や包丁、木材を使って何かを作る人を想像するのが一般的だと思いますが、魂を込めて自分の能力やスキルを諦めず向上させようとし、自分の作品の先を考える人はみんな職人といえるのではないかと思います。『雨の日の珈琲』の久保田さんは、まさにその職人精神を持っていると感じます。前職はグラフィックデザイナーとして完璧なデザインを追いかけ、現在のお店のロゴやパッケージなども自分でデザインし、頭からの想像を形にすることは、久保田さんの素晴らしい力だと思います。若い頃からコーヒーの至高を求め、今まで信じられないぐらいの数(およそ1,500軒ぐらい)のお店を巡り、理想的なコーヒーの味を探ってきたそうです。久保田さんはすでに40年近く自家焙煎を続けてきて、自分のコーヒーをより美味しくしようとする道を今までもこれからも自ら開拓しています。このように目的地のない道を一生歩み続けるのは本物の職人です。

豆兄弟(雨の日の珈琲&トライバルカカオ)

『雨の日の珈琲』から徒歩1分ほどの近くの場所に『トライバルカカオ』というチョコレートの専門店があります。ハイクオリティなカカオ豆を扱い、Bean to Barのスーパーチョコレート(カカオと砂糖しか使っていないもの)を販売しています。そんなに近くに2つの上品な豆類を扱っているお店があるのは、皆さんのご想像のとおり、偶然ではありません。『雨の日の珈琲』の久保田さんは『トライバルカカオ』のオーナーにとってお兄さんのような存在だと言っても言い過ぎではないでしょう。久保田さんは『トライバルカカオ』のオーナーがお店を開く前からさまざまなアドバイスをして、トップクラスカカオに挑戦することになったのも久保田さんの提案だということです。『トライバルカカオ』のロゴデザイン、パッケージデザインも久保田さんの作品です。「すでに進化してきたコーヒーの次はカカオも進化し、100年後でも需要がある」と久保田さんは語ります。また、コーヒーとココアには接点が多いそうです。西ヨーロッパから東ヨーロッパに行くとコーヒーの味が変わり、酸味が非常に強くなるという話を覚えていますか? 実はカカオも同じなのだそうです。カカオについて詳しくは、次の『トライバルカカオ』の記事で確かめてください。

この記事を書いた人

ドイツ出身

麗澤大学
東京大学

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プロフィール

2012年から在日しているドイツ人留学生のマルテです。マルちゃんで大丈夫です。

麗澤大学を卒業して、今は東京大学の柏の葉キャンパスで研究しています。

柏の優しい人が大好きです。柏の色々な場所やイベントを取材して、さらに柏のこと好きになりました。
記事や写真を通して、柏の綺麗な自然と人々の活動を紹介して、他の人も柏のこと好きになることを願っています。

参考サイト

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