アートラインかしわ実行委員で唯一のアーティスト、日本画家の福永明子です。
ライブペインティング30vs30の運営、そして2012年からは柏ゆかりの新進作家の展覧会「共晶点」の企画・運営・出展をしています。
アートラインの生みの親である石戸新一郎さんからはよく「両方できる人」と言われ、意味がわからなかったのですが、表現者の立場でありながら運営もできるということのようです。
芸術家は、自分の中の表現したいものをアウトプットする存在であり、それを繋ぎ、纏め、拡げる役割は、本来両立しにくいことかもしれません。
共晶点という言葉は、物理用語です。
「複数の成分が混ざり合う溶液から共融混合物が生じる温度」。
芸術に置き換えると、各々の表現でありながら、合わさると別の空間に昇華するということ。その化学反応を起こす場でありたい、という想いで名付けました。
その温度は毎年違うかもしれない。また、輝く混合物には、ある程度の質と精錬された純度が必要です。その見極めは重要ですし、楽しみでもあります。
共晶点の作家たちは、その純度に独特なものがあるように思います。
それは真摯さ、ストイックさと呼べるものかもしれません。
その視点は、作家だからこそわかるものであり、目新しさとは無縁です。
ですが、言葉にできない何か胸に響くものがある。そんな体験をしていただける場としてご好評を頂いてきました。
2021年に10周年を迎え、記念冊子「DECADE共晶点」を作りました。
日本画の制作の傍ら、72ページの編集作業に没頭し、形になったときには感慨深いものがありました。
そして10年もこうして続けてこられたのは、石戸新一郎さんをはじめアートラインかしわの皆さん、応援してくださる皆さん、そして何より作家の皆さんのおかげ様なのだと、感謝の気持ちでいっぱいになりました。
11年目、2022年の共晶点。
印象的だったのは、示し合わせたわけでもないのに、会場全体が一つの作品であるかのような調和でした。
それが、とても柔らかく優しい。毎年観に来てくださるほとんどの方も、口々にそう言われていました。
入ってすぐ目に入るのは、偶然にも被った3人の作家たちの温かな黄色。
そして少し進んで右側を見ると、なんとも落ち着いた柔らかなピンクたち。
年によってとんがってたり鮮やかだったり、違う化学反応が見られるのが、この共晶点の面白いところですが、今回の柔和さを見て私が感じたことは、世相が反映された表現者の無意識下の集合意識でした。
そして思うのです。この混迷混沌とした世に最も必要とされるのは芸術ではないかと。
和の波動を、柏から世界へ!
共晶点がそんな役割が果たせたらとの願いをもって、これからも様々な化学反応を起こしていきたいと思います。